選ばせる広告と認知不協和

スマホでゲームをすることが多いのですが、スマホゲームの中には無課金でも広告を視聴することで特典が得られることがあります。

いつものように、動画視聴して、特典報酬をもらおうと思った時、図ような画面が出てきたのです。

いつもなら自動で動画が開始されて、一定時間が経過すれば報酬をもらえるという仕組みです。

ところが、この時は、二つの動画が表示されて、どちらを見たいかの二択が示されました

動画を選択すると、選択された動画の再生が始まり、後はいつも通り、一定時間経過後に報酬が得られます。

選択式の動画広告

この広告に出会った時、よくできた広告だと思いました。なぜか、それは人の認知バイアスをうまく活用した効果的な広告だからです。以降では、どんなバイアスが使われているか説明します。

認知不協和

認知バイアスとは、一般的な人が同じように偏った判断を行うことを指しますが、その種類は非常に多く事典が作れるほどです。

今回は、そんな中でも特に認知不協和と呼ばれるバイアスが活用されている事例と言えそうです。

認知不協和とは、自分の中で矛盾する選択が存在する状況を指します。人はこの認知不協和を嫌うため、矛盾した状態を解消するような選択を行う傾向を持ちます。

例:間違いを認めない

なんだか難しい説明になりましたが、簡単な例を紹介しましょう。例えば、自分が間違っていることが分かった後でも、なかなか間違いを認めて誤ることのできない人がいたとします。この人は、まさに認知不協和に陥っており、なんとかそれを解消しようとしています。

自分が「正しい」と思って行った過去の行動ですが、同じ行動に対して、今ここで「間違いだった」と認めるのは、その行動に対して、自身の中で一貫せず矛盾した状況になります。

この矛盾を避けるためには、間違いを認めずに、やっぱり自分は正しかったと思い込む必要があります。このように認知不協和を解消しようとした結果、頑なに自分の間違いを訂正できないという行動が生まれます。

選択式動画広告の認知不協和

それでは本題の選択式の動画広告ではどのような認知不協和が働くでしょうか。

通常は自動的に動画再生が開始されるところが、選択式では、ユーザーが最初に動画を選ぶことになります。

選ぶということは少なくとも他方の動画よりも、そちらの動画の方が「良い」と判断したということです。その動画を視聴後に、この動画は「イマイチ」だったなと判断すると、同じ動画に対して、「良い」と「イマイチ」の矛盾した評価を下すことになります。つまり、認知不協和に陥るのです。

この認知不協和を避けるためには、自分で選んで見た動画に対しては、なんとなく「よかった」という評価をせざるを得ません。最初に動画を選ばせるだけで、広告への印象を良くすることができるのです。

もちろん、認知不協和とは別に、一方的に動画を押し付けられるよりも、ユーザーが自分で選べた方が良いという意味でのポジティブな効果もあるでしょうから、よくできた仕組みです。

まとめ

最近見かけるようになった、選べる広告を例に認知不協和について紹介しました。

このような心理学・行動経済学の知見を反映したデザインや制度の設計を見つけるとワクワクしますね。

以下の書籍では、そのような人との関わりを意識した設計方法が深掘りされています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました