非平衡統計力学
粒子の動きを見て仕切りを動かすだけで、熱力学的な仕事をせずにエントロピーを減少させるマクスウェルの悪魔は有名ですね。このままだとエントロピー増大の法則と矛盾しますが、悪魔のメモリーを消去する仕事も含めれば矛盾しないと言う話は他所で見かけてたのですが、イマイチ納得できてませんでした。
この本では、系の測定と系へのフィードバックを伴う情報熱機関についてしっかりと説明されています。キーとなるのは、測定器による測定は系との相互作用であるということです。測定器自身は独自の物理状態を持っていて、その相互作用により物理状態を変化させるプロセスが測定に当たります。この測定器の物理状態のことをメモリーと呼んでいて、測定による系と測定器の相互作用による仕事、サイクルを回すために、メモリーを測定前の状態に戻すための仕事が必要となり、これらの合計をゼロにできないために熱力学第二法則が保たれることになります。
昔からの疑問がようやく解けた気がしました。
量子エンタングルメントから創発する宇宙
「非平衡統計力学」と同じシリーズで、こちらは量子から宇宙へと繋げる話で、ホログラフィー原理が中心の話題になります。ざっくり言うと、ホログラフィー原理とは私たちが生きているこの三次元の世界が、二次元の世界と見なせますよと言うことです。そこに関連して、「次元が落ちてる話」がいくつか出てきます。
その中の一つはブラックホールのエントロピーが表面積に比例すると言うものです。ここでのブラックホールやエントロピー自体は三次元上での概念なので、通常ならエントロピーも体積に比例するはずです。ところが、エントロピーが表面積、つまり二次元的な量に比例するので次元が落ちています。
「ホログラフィー原理」や「AdS/CFT対応」などよく聞く用語の背景が知れた気がしました。
心は量子で語れるか/ペンローズの量子脳理論
こちらは結構昔の本ですが、量子と意識を扱った「量子脳理論」の本です。最近、AIが意識を持つと主張した元Googleのエンジニアがニュースになってましたが、この理論から言わせると今のAIが意識を持つことは決してないということになるでしょう。量子脳理論の全体像は下の記事で簡単に説明してますので、興味がありましたらご一読頂けますと幸いです。
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